インドの留学生と1992年のチャネリング バシャール

2017年10月31日

私が大学院二年生だった一九九二年秋には同じ油画科にインドのデリーから留学生がやってきた。私は彼が日本に来る前にインドで描いた絵画作品を見せてもらいその時のことが今現在でも強烈な印象として残っているけれども、彼の画面からは日本人には描けないであろうインド独特の感性のようなものも強烈に感じとれたのだ。それはインドのヒンドゥー寺院などでよく見かける神々の肖像絵と細密描写で描かれたダリのシュールレアリズム作品を混ぜ合わせたようなスタイルの油彩画作品で、しかしながら現代アート的な視点からでは趣味っぽいとか時代遅れ的であるとかいった指摘をする批評家もいそうな作風だった。そして彼自身もそういった空気を東京暮らしで感じていったのか、またはたんに生活環境の大きな変化によって日本で暮らすうちに彼の意識が変化していったのかは定かではないが数年後の彼の個展では画風も具象的な描写をほとんど使わない抽象的な作品で、私が初めて彼の作品から受けたインド人にしか描けないような感性といったものはあまり感じられなくなっていたような気がする。でも現代アートの世界では無難に通用できそうなタブローとしての伝統的な絵画としてだけでなくいわゆる平面作品とも呼べるようなスタイルの作風だった。他に数年前には東京芸大保存修復の教授と何人かの学生の集まりに参加したことがあってその時見た台湾の留学生の油彩画もとても印象に残っていて、彼女の作品は一輪の花を描いただけの小品であったけれどもその作品からは私が以前にルドンの作品の前に立った時にも感じたことのある胸の中心に染み入ってくるヒーリングエネルギーのような何かが強烈に感じられ、彼女の場合も日本人には描くことができないであろう台湾独特の感性のようなものが感じられたのだった。私の印象に特に強く残っているこの二人の作品には共通点があって、それは細かい手作業で描き込まれていて、ねちっこいとも言えるような筆のタッチで画面に手が入っているという点。そしてこのことが作者の感性や精神が作品に乗り移るかのようにして強く反映されていることの大きな要因の一つであるように私には思えてしまったのだ。
日本に来たばかりの頃のインドの留学生ゴーシュさんとはプライベートでもかなり親しくしていて、彼が東京で暮らし始めたばかりの頃には都内のインド料理レストランを案内したこともあって、彼には日本で食べるインド料理メニューの値段の高さにびっくりされてしまったりもした。その後は彼のアパートに遊びに行き、彼自身が上野のアメ横辺りで買い揃えた材料で作った本場のインド料理を私の方がご馳走になったりしたこともある。
そして一九九二年秋にはアメリカ人チャネラーのダリル・アンカさんが来日していて、この年は一九八三年から始まったダリルさんがエササニという名の惑星の宇宙存在バシャールをチャネリングするという九年間の同意の最後の年であるといったことも大きく宣伝されていた。一九九二年当時大学の油画科の学生仲間の間でも宇宙存在バシャールのチャネリング本はかなり知れ渡っていて同級生には「バシャールはもう古い!」とか言われたこともあった。そのダリルさんの公開チャネリングに参加費は私が払ってゴーシュさんを連れて行ったことがあった。参加後の彼のコメントは「ポジティブとネガティブがどうのこうの・・・」といったわりと批判的な言葉が返ってきたけれども、しかしながらこのとき私が彼を連れて行った目的はバシャールの語る話の内容ではなかったのだ。私は自身のそれ以前のインドでの長期滞在の経験から、インド人には聖者や覚者と呼ばれるような人の全身から放射されている、そのエネルギーを受け取る人のコンディションによっては磁気エネルギーのようなものとしてほとんど物理的にも感じ得るような光のエネルギーや、また聖者の遺灰や亡骸の収められたサマーディ(霊廟)からでさえ放射されている光のエネルギーを感じとることがかなり常識的に共有されているように思われたので、インド人であるゴーシュさんならチャネリング状態のダリルさんの全身から放射される強烈な光のエネルギーを感知できるかもしれないと思ってしまったのだった。そして私がこれまでに実際に会ったことのある聖者や覚者と呼ばれるような人の中では一九八九年にインドのプネーで会った肉体を去る直前の時期のOSHOや一九九二年の年末にエジプトのギザで会った際のポール・ソロモンなどが特に印象に残っていて、クフ王の大ピラミッドのすぐ目の前に建つメナハウス・ホテルでの滞在時のポール・ソロモンの全身から放射されていた圧倒的とも言えるほどのエネルギーについては一緒だった日本人ツアー仲間の一人も私と同様に感じ取っていたようで、「ポール・ソロモンってなんであんなにすごいエネルギーが出てるんだろうね!」と私に話してくれたこともあった。ポール・ソロモンとはその後日本国内でも二度再会しているけれどその時彼に会った印象ではギザで会ったときほどの強烈なエネルギーは感じられなかったような気がするので、エネルギー・ヴォルテックスと呼ばれるような聖地やパワースポットを訪れることは聖者のような人達にとっても彼自身の霊体の光を増大させる効果があるかもしれないのだ。そしてその彼らと同様に強く印象に残っているのがダリル・アンカさんがまだバシャールのエネルギーとうまくつながることができていたと思われる一九九二年当時のチャネリング中のダリルさんで、それは私にとっては後光眩い聖者のような光の存在がこの娑婆の世界、東京渋谷の街中に一時的に出現してしまうといった超常現象を見ているような出来事でもあったのだ。

公開日 2017年10月31日 火曜日

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